1. 背景と目的
まなびID 志望校登録機能との連携
まなびIDでは、ユーザーが「志望校」を最大10件登録できる機能が今後提供される予定である。この志望校データは、パスナビ、入試正解デジタル、タゲ友、英検カコモンなど、複数の連携サービス間で共有される設計となっている。
入試正解デジタルとしては、このまなびID志望校データを活用し、ユーザーの学習体験を向上させる機能を実装する。
入試正解デジタルの位置づけ
- 利用フェーズ: 高校1年から大学入学までの受験期間全体で利用される。特に高3秋〜冬の過去問演習期、および共通テスト直後〜二次試験までの期間にピークが来る
- 特徴: 大学入試の過去問とその解説を提供
- 志望校機能の役割: 志望校の過去問へのアクセス性向上、学習進捗の可視化
本提案の材料
- 皆さんに作成いただいたユーザーストーリー仮説
- 栗林様からいただいたドメインエキスパートとしての知見
- 学びID登録機能検討資料の仕様
- 前回合意した「マイリストが現状ダッシュボードとして十分に機能していない」という課題認識
2. まなびID 大学登録機能検討 抜粋資料より
以下は まなびID_大学登録機能検討_202509 抜粋と追記 に記載された仕様を正として整理したものである。この仕様が変更された場合、本提案の内容も見直しが必要となる。
仕様一覧
| 項目 | 仕様 | 備考 |
|---|---|---|
| 書き込み権限 ※1 | あり | 入試正解デジタルからまなびIDに志望校を書き込める |
| 志望校の構造 | 10枠のブックマーク | 順位構造ではない(志望校1〜10の枠) |
| 学部情報 | 表示のみ | 検索には使えない(マスタ構造の制約) |
| メリット機能 | 各サービス側で検討 | 志望校データを活用したメリットを各連携サービスが提供する |
| Salesforce連携 | 対象外とする |
重要な表記ルール
- 「第1志望」「併願校」等の順位を示す表現は使用しない
- 志望校は「志望校1」「志望校2」...「志望校10」という枠として扱う
- 表示順序はまなびID側の登録順に従う
提案者による補足(注釈)
本提案では、まなびID資料に記載された仕様に従い、入試正解デジタルからまなびIDへの志望校書き込みを前提として進める。
ただし、設計上の懸念として以下を記録しておく:
- シンプルな設計との比較: 読み取り専用(まなびIDのデータを参照するのみ)の方がシンプルな設計となりうる
- 波及の問題: 入試正解デジタルで志望校を変更した場合、パスナビ等の他サービスにも反映される。この挙動をユーザーが認識していない場合、予期しない変更として混乱を招く可能性がある
- 複数サービス共通のマスター機能: 志望校データは複数のアプリケーションにまたがって使用されるマスター機能である。仕様設計の作り込みが不十分な場合、将来的に大きな技術的負債となる可能性がある
前回の打ち合わせにおいて、「お気に入り大学」の管理だけでも一大トピックになることが判明している。今回は考えうる最もシンプルなMVPとして本仕様で進めるが、可能であればこの領域についてはもう少し検討の余地があるのではないかと考える。
「お気に入り大学」(120枠)との差別化が設計上の課題となる。差別化のポイントは以下に置く:
- サービス横断での共有(まなびID連携)
- 優先表示・進捗管理機能の提供
3. 栗林様知見から導いた仮説
これまでの知見に基づき、以下の5つの仮説を立てて機能設計を行った。
根拠:
- 本命大学の直近過去問は本番1週間前までキープ
- 同格大学や過年度から着手するのがセオリー
- 早い段階でやみくもに志望校の過去問着手を煽るのは逆効果
→ 反映先: 案-013(サジェスト内容の論点)
根拠:
- 意識高い系は全体の1〜2割
- 大多数は共テ後まで動かない
→ 反映先: 6象限マトリクスのリソース配分検討
根拠:
- 過去問は「自分の苦手な分野単元を知るツール」
- 参考書のインデックスとして機能
→ 反映先: 将来ビジョン(データ構造化が必要)
根拠:
- 「難しい」「わからない」「簡単」の主観タグを提案
- 正誤自動判定は実装コストが高い
→ 反映先: 将来検討の新規案候補
4. ユーザー状態の整理(6象限マトリクス)
ユーザーの状態を「志望校登録」と「取り組み度」の2軸で整理し、それぞれの状態に最適な施策を検討する。
| 未着手 解答数 = 0 |
進行中 解答数 = 少数 |
習熟中 解答数 = 多数 |
|
|---|---|---|---|
| 志望校 未登録 |
A
オンボーディング
サービス理解、オンボーディング
|
B
昇格提案
「いくつかの大学を見ていますね。志望校を登録すると…」
|
C
メリット訴求
「たくさんの問題を解いていますね!志望校を登録すると…」
|
| 志望校 登録済み |
D
最初の一歩
最初の一問を解くよう促す
|
E
進捗表示・伴走
進捗表示、励まし、伴走
|
F
達成度・次ステップ
達成度表示、次のステップ提案
|
背景と軸の定義(詳細)
背景:マイページ設計の考え方
現在のマイリストを、よりパーソナライズされた「マイページ」もしくは「ダッシュボード」として再設計することで、ユーザー体験を向上できる可能性がある。
ユーザージャーニー上の状態をいくつかのシチュエーションごとにカテゴライズし、それぞれにとって使い勝手の良い状態を検討することで、良い画面設計ができるのではないか。この設計ができれば、志望校というコンセプトを抜きにしてもアプリとして使いやすいものになり、さらに志望校データを活かす準備も整うと考える。
軸の選定理由
この2軸は、入試正解デジタルが保有するデータから自動判定でき、かつ志望校機能の価値を引き出すために直接的な指標として選定した。
軸の定義
- 未登録:まなびIDに志望校を登録していない
- 登録済み:1件以上の志望校を登録している
- 未着手:解答済み = 0
- 進行中:解答済み = 少数
- 習熟中:解答済み = 多数
象限Eがユーザー体験の中心となる可能性が高い。共テ前の時点では意識高い系1〜2割だが、共テ後は出願が決まったユーザーの大多数がこの象限を通過する。体験設計の重心をここに置くべきか確認したい。
ユーザージャーニーの3パターン
ユーザーはこのマトリクス上をどのように移動するか。主要な3つのパターンを想定した。
D → E → F
A → B に長く滞在
象限間を行き来
5. 提案する機能
以下は、まなびID資料の仕様を前提とした機能提案である。
志望校の過去問をトップに優先表示
受け入れ条件
- マイページ(トップ)に志望校の過去問一覧が表示される
- 登録されている志望校(最大10件)が一覧表示される
- 各志望校には学部情報が小さく表示される(登録されている場合)
- 各志望校から過去問一覧へワンクリックで遷移できる
- 志望校が未登録の場合は、登録を促すCTAが表示される
- 各志望校にパスナビへのショートカット(入試科目・配点、偏差値・共テ得点率)が表示される
備考: 表示順序はまなびID側の登録順(志望校1〜10の順)。パスナビへのリンクは外部リンクだが、クイックメニューのようにシームレスに配置することで、志望校の詳細情報への導線を確保。
志望校登録の促し(CTA)
受け入れ条件
- マイページに「志望校を登録しましょう」のCTAが表示される
- 登録することで得られるメリットが説明される
- 優先表示
- 進捗管理
- サービス横断での共有
- CTAから志望校登録画面へ遷移できる
- 象限B/Cでは、解答履歴に基づいた訴求メッセージが表示される
備考: このCTAを通じて「お気に入り大学」と「志望校」が別物であることをユーザーに学習してもらう。入試正解デジタルで志望校を登録/変更した場合、パスナビ等にも反映される旨の説明を検討。
訴求メッセージは時期・意識レベルで出し分けると効果的な可能性がある。
- 共テ前の意識低層: 「共テ後の追い込みに備えて登録」
- 共テ前の意識高層: 「すぐに過去問が優先表示されます」
判定基準(解答量、偏差値等)と実装可否について確認したい。
最初の一問を解く促し
受け入れ条件
- 志望校登録後、「おすすめの最初の一問」が提示される
- 提示される問題の選定ロジックは要確認(💬)
「何を出すか、何が出せるか」が論点。
- 過年度問題(3〜5年前)を優先サジェストする方が学習効果が高い可能性
- 同格大学の問題を勧める考え方もある
- 直近年度は「本番前の仕上げ用」として温存を促す
- DB構造上の実装可否を確認したい
志望校へのクイックアクセス
受け入れ条件
- マイページから志望校の過去問一覧へ最短でアクセスできる
- 「前回の続き」へのショートカットがある
- 未解答の問題への導線がある
備考: 具体的なUI(検索プリセット、一覧表示、ショートカットボタン等)は後で決定。まなびID資料の「メリット機能②(チェックボックスで検索)」はこの受け入れ条件を満たす実装方法の一つとして検討可能(Nice to Have)。
お気に入りから志望校への昇格提案
受け入れ条件
- お気に入り大学一覧に「志望校に登録」ボタンが表示される
- 解答済みの大学に対して「志望校にしますか?」のナッジが表示される
- 昇格時に志望校(10枠のうちどこに入れるか)を選択できる
- 志望校が10件登録済みの場合は、入れ替えのUIを提供する
「大学検索結果の一覧にも『志望校に登録』ボタンを付けてほしい」という要望が想定されるが、以下の理由から慎重に検討すべきと考える:
- メンタルモデルの学習: 初めて使うユーザーにとって、「志望校に登録」と「お気に入りに登録」が同時に表示されると、どちらを選ぶべきか迷う。「志望校」は他サービスへ波及する重たい操作であるのに対し、「お気に入り」はカジュアルな操作。このメンタルモデルを学習する前に両方のボタンが表示されると混乱を招く
- 段階的な案内: まず一覧では「お気に入り」のみを表示し、「志望校」への昇格はお気に入り一覧から操作する設計の方が、ユーザーへの丁寧な案内となる
- 詳細画面での配置は検討可能: 大学詳細画面であれば画面面積が十分に取れるため、「志望校に登録」ボタンを配置することは検討できる
- 案-011との連携: トップページで「志望校を登録してみませんか」というナッジを挟むことで、両者の違いを学習してもらうステップを確保できる
6. 優先度とフェーズ案
優先度ランク
| ランク | 案 | タイトル | ユーザー価値 | 実装コスト |
|---|---|---|---|---|
| 最優先 | 案-001 | 志望校の過去問をトップに優先表示 | 高 | 低 |
| 最優先 | 案-011 | 志望校登録の促し(CTA) | 高 | 低 |
| 最優先 | 案-013 | 最初の一問を解く促し | 高 | 低 |
| 優先 | 案-002 | 志望校別の進捗率を表示 | 高 | 中 |
| 優先 | 案-003 | 志望校へのクイックアクセス | 高 | 中 |
| 推奨 | 案-010 | オンボーディング・初回ガイド | 中 | 低 |
| 推奨 | 案-012 | お気に入りから志望校への昇格提案 | 中 | 低 |
実装フェーズ
7. まとめ・次のステップ
💬 ディスカッションポイント
本提案において、以下の点について議論・合意をいただきたい。
| # | 項目 | 論点 |
|---|---|---|
| 1 | 案-011 CTA訴求 | 時期・意識レベルでの出し分けは有効か?判定基準は? |
| 2 | 案-013 最初の一問 | 過年度・同格大学サジェストはDB構造上可能か? |
| 3 | 体験設計 | 象限E中心の体験設計でよいか?(共テ後は大多数が通過) |
詳細は付録「参考_仮説課題一覧」を参照。
本提案の要点
- まなびIDの志望校データを活用し、入試正解デジタルの学習体験を向上させる。
- 6象限マトリクスでユーザー状態を整理し、状態に応じた施策を設計した。
- Phase 1(MVP)は「優先表示(パスナビリンク含む)」「CTA」「最初の一問」の3機能に絞る。
次のステップ
- 本提案の内容についてフィードバックをいただく
- Phase 1の詳細仕様を確定
- まなびID API連携の技術調査
- Phase 1の実装・テスト
付録
案 × 象限 対応表
新規案候補(kuribayashi様知見由来)
| 案 | タイトル | 対象象限 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 新規 | 過年度問題の優先サジェスト | D, E | DB構造の確認が必要 |
| 新規 | 同格大学のサジェスト | D, E | 判定ロジックの検討が必要 |
| 新規 | 主観タグ機能 | E, F | 正誤データの代替として |
| 新規 | 直近年度の温存リマインド | E, F | Nice to Have |
MVP候補(ROI: ◎)
全案詳細リスト(User Stories & AC)
志望校の過去問をトップに優先表示
受け入れ条件
- マイページ(トップ)に志望校の過去問一覧が表示される
- 登録されている志望校(最大10件)が一覧表示される
- 各志望校には学部情報が小さく表示される(登録されている場合)
- 各志望校から過去問一覧へワンクリックで遷移できる
- 志望校が未登録の場合は、登録を促すCTAが表示される
- 各志望校にパスナビへのショートカット(入試科目・配点、偏差値・共テ得点率)が表示される
備考: 表示順序はまなびID側の登録順(志望校1〜10の順)。パスナビへのリンクは外部リンクだが、クイックメニューのようにシームレスに配置することで、志望校の詳細情報への導線を確保。
志望校別の進捗率を表示
受け入れ条件
- 志望校ごとに進捗率(○問中○問完了)が表示される
- 進捗率がプログレスバーで視覚化される
- 「あと○問で制覇」のカウントダウンが表示される
- 登録されている志望校(最大10件)の進捗を一覧で比較できる
- 進捗率は科目別にも表示できる(オプション)
志望校へのクイックアクセス
受け入れ条件
- マイページから志望校の過去問一覧へ最短でアクセスできる
- 「前回の続き」へのショートカットがある
- 未解答の問題への導線がある
備考: 具体的なUI(検索プリセット、一覧表示、ショートカットボタン等)は後で決定。まなびID資料の「メリット機能②(チェックボックスで検索)」はこの受け入れ条件を満たす実装方法の一つとして検討可能(Nice to Have)。
オンボーディング・初回ガイド
受け入れ条件
- 初回ログイン時にサービス紹介が表示される
- 主要機能(過去問検索、解説、マイリスト)が説明される
- 「志望校を登録する」への導線が明確に表示される
- スキップ可能である
- 2回目以降は表示されない
志望校登録の促し(CTA)
受け入れ条件
- マイページに「志望校を登録しましょう」のCTAが表示される
- 登録することで得られるメリットが説明される(優先表示、進捗管理、サービス横断での共有)
- CTAから志望校登録画面へ遷移できる
- 象限B/Cでは、解答履歴に基づいた訴求メッセージが表示される
備考: このCTAを通じて「お気に入り大学」と「志望校」が別物であることをユーザーに学習してもらう。
お気に入りから志望校への昇格提案
受け入れ条件
- お気に入り大学一覧に「志望校に登録」ボタンが表示される
- 解答済みの大学に対して「志望校にしますか?」のナッジが表示される
- 昇格時に志望校(10枠のうちどこに入れるか)を選択できる
- 志望校が10件登録済みの場合は、入れ替えのUIを提供する
最初の一問を解く促し
受け入れ条件
- 志望校登録後、「おすすめの最初の一問」が提示される
- 提示される問題の選定ロジックは要確認(💬)
継続の励ましメッセージ
受け入れ条件
- 進捗に応じた励ましメッセージが表示される(例:「〇〇大学の過去問、30%完了!この調子で続けましょう」)
- マイルストーン達成時(25%, 50%, 75%)に特別メッセージが表示される
- 連続学習日数が表示される(オプション)
達成度表示・次ステップ提案
受け入れ条件
- 「制覇率」または「達成度」が表示される
- 「ここまでやりました」の総括が見られる
- 次のステップが提案される(例:「他の志望校の対策も始めましょう」「苦手分野を復習しましょう」)
- 他の志望校への導線(パスナビへのリンク含む)がある
志望校間の傾向比較
受け入れ条件
- 志望校間の出題傾向比較表が表示される
- 分野別の出題頻度が比較できる
- 「傾向が近い大学」がわかる
前提条件: 問題の分野タグがDB化されていること、傾向データの構造化・集計基盤
解き直し・復習誘導
受け入れ条件
- 「間違えた問題」リストが表示される
- 「もう一度解く」ボタンで復習できる
- 解き直し時に解説を再確認できる
- 復習サイクルのリマインドがある(オプション)
前提条件: 正誤データ(自己申告でも可)の取得機能。「ベテラン教員による質の高い解説」が必ずついているため、解き直し時に解説を再確認することで、他サービスにはない学習体験を提供できる。
表記ルール
以下の表記は使用しない:
- ❌「第1志望」→ ⭕「志望校(10枠)」
- ❌「併願校」→ ⭕「志望校(10枠)」
- ❌「志望順」→ ⭕「登録順」